こんにちは。聖一朗(@sei01row)です。
今年2019年の秋は、ボクの住んでいる千葉県は台風15号でかなりの被害を受けました。
その後も大型の台風19号が日本列島を襲い、長野や福島、茨城などは大きな河川で堤防が決壊し、甚大な被害を受けました。
このような『天災』による被害は、そこに住んでいる住人にとっては防ぎようがない事態であり、それは当然のことながら、その地で事業を興している経営者いとってもかなりの損害となる事態です。
働いている従業員にとっても『会社が被災して仕事ができない』といった事になり、働けないから収入なくなるといった二次的な被害も起こるでしょう。
例えばそんな『自分はケガもなく健康なのに、天災が原因で仕事に行けない』という場合に対して、会社としては休業手当を支払うべきなのか?
今回は経営者側の立場から、災害時の休業手当の支払いに関する取扱いについて書いていきたいと思います。
この記事が、災害によって会社が被災したにも関わらず、従業員に対しての誠意をと求められている経営者の方、または仕事に行くことが出来なくなっている従業員の方のお役に立てれば幸いです。
目次
労働基準法 第26条の原則と天災時のポイント
労働基準法 第26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
引用:Wikibooksより
休業手当の原則は、上記のように労働基準法で定められており『使用者の責に帰すべき事由による休業』に関しては休業手当を支払うようにと書かれています。
ポイントはこの『使用者の責に帰すべき事由による休業』という部分ですね。
これはどういう意味なのか?というと、その休業が果たして使用者(経営者)の責任によるものなのか否か?という点で判断するということです。
つまり天災の場合で言えば、これについては完全な不可抗力による休業となりますので、原則としては『使用者の責に帰すべき事由』にはならず、休業手当の支払いは不要となります。
でもこれは、あくまでも原則の話。
一律に天災のためという理由で、休業手当を支払う必要がないという事にはなりませんので、注意が必要となります。
この場合はどうなの?参考例を紹介
例1 従業員の安全配慮の為、使用者の判断で自宅待機などを命じた場合の休業
「電車が止まる場合があるから」など、従業員の安全を配慮した取り扱いをした場合でも、会社の事業が運営できる状態にあれば休業手当の支払いが必要となります。
ただし災害の影響で会社が危険な状態で、運営が出来ないといった理由で自宅待機を命じた場合は、その限りではありません。
例2 交通機関の不通や麻痺により、通勤が不可能となったことによる休業
会社は運営出来ているにも関わらず、災害の影響で交通機関が麻痺し通勤が不可能となった場合は、その通勤不能となった従業員への休業手当の支払いは不要です。
でもこの場合、電車の遅延・不通は不可抗力であることから出勤とみなす配慮を行っている企業もあります。そりゃそうですよね?
例3 会社や工場の損壊、またはその中の機械の破損などで運営・操業が不可能となったことによる休業
この場合は当然ながら、不可抗力による休業とみなされるために『使用者の責』にあたらず、休業手当の支払いは不要となります。
例4 計画停電にともなっての休業となった場合
この場合は複雑で、計画停電時に事業の継続が困難であれば休業手当の支払いは不要。
でも停電してない時間帯に会社の運営ができるにも関わらず、休業とした場合には手当の支給が必要となります。
ただし、停電時のみの休業が著しく不合理で、停電にを含めて終日休業しなければならない場合は、支払いが不要となります。
例5 取引先の被災による顧客の減少等を理由に自宅待機などを命じた場合の休業
大手の100%子会社である場合など、事業自体が被災してしまった取引先に大きく依存している場合などは「災害が理由で事業継続が困難」と判断されて、休業手当の支払いが不要となります。こういった場合は取引先への依存度がどの程度か?という判断が必要なために注意しなくてはなりません。
天災事変等の影響により、会社の運営に支障をきたした場合の休業手当の支払いは「事業の運営が行えない状態なのか」「それが災害によるものなのか」が総合的に判断されることになります。
経営者の方で、その支払いに迷った場合には、近くの労働基準監督署に相談に行くことをお勧めします。
じゃあ給料の支払いはどうなの?
今回のように台風の影響で『会社の倒壊』 『資金繰りの悪化』『銀行などの金融機関の機能停止』が生じた場合、給料の支払いが免除になることってあるんでしょうか?
労働基準法第24条
賃金は(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならない。
(賃金支払の五原則)
つまり災害だろうがなんだろうが、給料の支払い義務が免除になるような事はありません。
でも台風被害によって、労働者が出勤できなかった場合について、出勤しなかった日の給料の支払いはどうなるのか?
これについては、労働契約や労働協約、または就業規則の中に労働者が出勤できなかった場合の給料について定めがある場合は、それに従わなくてはいけません。
定めがないからといっても状況が状況ですから、しっかり労使で話し合って不利益をなるべく回避する努力は必要だと思います。
災害には知識の備えも必要ですね
日本という国は、台風もそうですけど地震などの災害も多く発生する地域です。
今回の台風では、かの東日本大震災で被害を受けた東北地方や、中越地震や長野県中部地震で多くの悲しみに包まれた長野県も甚大な被害を受けてしまいました。
でもそんな災害大国の日本だからこそ、そこに住むボクたち日本人は優しくて決まりを守り、そして助け合うことが出来る民族になってきたのかもしれません。
今回紹介したのは、あくまでも法律上の事です。
例えば会社で働く従業員の家が濁流に流されてしまったら、その会社の社長は法律を振りかざすでしょうか?
だからといって、被害者が情に訴えて主張するのも違うと思います。
お互いが災害に備えて正しい知識を持ち、それを踏まえた上で思いやりのある対応をする。
それこそが災害時に必要なことだと思います。
今回被害に遭われた方々へ、心からお見舞いを申し上げるとともに、一日も早く普通の日常が戻ることをお祈り申し上げます。