こんにちは。聖一朗(@sei01row)です。突然ですが『南総里見八犬伝』という話を知ってますか?
題名は聞いた事があるという人は多いと思います。あの話って江戸時代の後期に大流行した、長編スペクタクルファンタジー作品なんですよね。
今回はそのゆかりの地である伏姫籠穴に行って来たので、書いて行きたいと思います。
これを読んで『南総里見八犬伝』に興味を持って頂ければ幸いです。
目次
あのマンガも影響を受けてる?『南総里見八犬伝』のあらすじ
ざっくりですが、あらすじを紹介します。なぜざっくりかというと『南総里見八犬伝』は全106巻もあるらしいんですよ。
106巻も説明出来ないのでざっくりになります。
昔、里見義実っていうお殿様がいて、そのお殿様には伏姫っていう娘がいたんですね。それで隣国から攻められて劣勢になった時に、飼っていた犬(名前が八房)に冗談で「敵将の首を取って来たら、伏姫をやる」って言っちゃったんですね。
八房は本気にして、なんと敵将の首を取って来ちゃったんです。義実は「あれは冗談」って言ったんですが、伏姫も「殿様が言った事なんだから引っ込められないでしょ」って事になって、伏姫は八房と富山(とやまではなくとみさん)という山に籠ったんです。
実はこの義実さんは、過去にも自分が言った事を取り下げた事があって、もともと領地を治めていた殿様を攻めて倒した時に、捕まえた奥方(玉梓)を「許す」って言ったのに、家来たちの「許しちゃダメでしょ」って言葉で、処刑しちゃったんです。
玉梓は「末代まで呪ってやる」と言って絶命したっていうエピソードも影響してたんですよ、きっと。
それで、もともと伏姫の事が好きだった大輔さんって侍が連れ戻しに行った時に、伏姫は懐妊してたんですね。
逸話ですが『八房の気が入った』みたいです。変な事は想像しないように。
それで大輔さんが放った鉄砲の玉が八房に命中。その流れ弾が伏姫にも命中したんですけど、伏姫は自分の純潔を証明するために割腹。そこから飛び出した8つの玉が空に飛び散って行ったんですね。これは善の玉です。
(伏姫が持っていた数珠の8個の玉が切れて飛び散ったという話もあります)
その後、大輔さんは出家してこの8つの玉を探す旅に出ます。そして8つの玉を持つ名前に“犬”がつく戦士たち(八犬士)を国に連れ帰って来て、八犬士大活躍!・・・というストーリーです。
玉が飛び出して空に散っていく・・・これに似た話を知ってますね?そうドラゴンボールです。
大元は西遊記ですが、玉のエピソードのもとになったのがこの『南総里見八犬伝』だと言われています。
8人のキャラもしっかり立っていて、それぞれにドラマがある。現代の人気マンガが長編化しているように、滝沢馬琴さんも書きたい事が沢山あったんでしょうね。
まるで実在したかのような場所
物語に出てくる伏姫は架空の人物です。もちろん八犬士も実在していません。でも里見氏には8人の忠臣がいて、その人たちがモデルになったようです。
写真は伏姫籠穴の入り口です。この先に伏姫と八房が籠っていたとされる洞穴があるんです。何度も言いますが、伏姫は実在してません。
でも物語の舞台となる富山の登山道入り口にこれがあるんですね。
実在してないし、穴にも籠ってないのに立派な門構えですよね。
物語はフィクションですが、もしかしたら姫は本当にいたんじゃないかと思ってしまいます。
この入口の脇にあるボードにはこんな文章が書かれていました。
「伏姫も八房も文学の中に登場する架空の主人公であるはずが・・・中略・・・物語に書かれた空想の世界と、現実との狭間に立つ時、伏姫籠穴は私達に何を語りかけようとしているのだろうか・・・」
登山道の入り口に建っているここには街の音がしません。この文章を読んでみると、ここはひょっとしたら現実じゃないのかもしれないと感じてしまいます。
伏姫が籠った時には階段なんて無かったんですが、ここを二人が(1人と1匹が)登っていったんじゃないか?という想像にかられます。
結構急な階段なので、上るには気合が必要かもしれません。
長い階段と書きましたが、上ってみると高さはそれほどでも無かったです。
念を押しますが、伏姫・八房・八犬士は実在していないんです。いないんですけど、この先に待ってる気がしてしまいます。
そこには八犬士と伏姫が待っていた
なぜ舞台なんて作られたのか?
休憩の為?休憩所は登る途中に作られてました。
集合場所?それとも籠穴を見学する人の待機所なのか?分かりませんが、広さにして、柔道場一面分くらいの広さがあります。
八角形それぞれの柱には、玉が乗っていて八犬士の名前が入っています。
これを見ていると、8人が柱に立って舞台の中心を見ているかのようです。
籠穴はこの舞台の、ほんのちょっと先にあるんですが・・・
まったく恥ずかしい想像なんですけど、時々伏姫がこの舞台に降りて来ていて、八犬士がそれを守ってるなんて事を考えてしまいました(照)
八犬士が持っていた玉には、それぞれ仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の文字が入っていたそうなんですが、舞台の床にはこんな風に文字が刻まれています。
作り話をここまで現実化しようとしている場所って、他にもあるんでしょうか?それほどこのファンタジーストーリーは、南房総市の代表作として重要視されているんですね。
広さにして、大き目のテントの中くらいです。女性と犬が生活していた広さとしてはそれほど無理のない広さですね。
奥には八個の文字の入った石の玉があります。
この手前の玉が伏姫のモチーフなんですね。
籠穴の入り口には伏姫からのメッセージがある
籠穴の入り口には看板が立っていて、そこには「私は里見義実の娘、伏姫でございます」から始まるメッセージが書かれています。そこには伏姫の言葉での思いがつづられていました。
「この世で子供たちの顔を見る事や、共に暮らす事は叶いませんでした(中略)私は、里見家に生まれ、母として、世に誇れる八人の子を残し、そして愛する八房と共に、この祠に永眠できたことを、心から幸せと思っております」
確かに実在の人物ではない伏姫ですが、この世に『里見八犬伝』という物語が誕生し、長い年月の中で映画やドラマ、またマンガなどで描かれてきました。
この籠穴が存在している事も含め、伏姫や八房はこの世に生を受けたのかもしれません。
最後に
ここは観光名所というほど目立った所に建っているわけでもないですし、物語を知らなければ誰も興味を持たないでしょう。
まして戦国武将や偉人達のように、登場人物たちは実在さえもしていないんです。
でもたくさんの人に読まれ、演じられてきた確かな存在は、ここがある限り架空ではないんじゃないかと感じてしまう場所でした。
南房総市を訪れた時には、是非一度立ち寄って頂きたいスポットの一つです。